禅の神秘『伝灯録』

Q.先生が大衆に教えるための最初のテキストとして『伝灯録』をお選びになった理由と、その必要性についてお話ください。

歴史上に存在する教典、たとえばインドのヴェーダ、ウパニシャッド、老子の道徳経、バガヴァッドギーター、仏教の経典、聖書、孔子の易経など・・・。これらは悟りの状態を説明したり、悟りの状態に入ってその世界から流れ出てくるメッセージを記録したり、悟りをもってこの世を治めることについて説明したりしたものです。

このように、すべての教典は悟りの状態やその結果を記述したものですが、『伝灯録』は、一人の人間が、彼の師の前で今まさに悟ろうとする、状態の変化の決定的瞬間を記録した大変重要な経典です。

変化が起ころうとしているその頂点の状態をトンと突いてやることによって、卵が鶏になり、さなぎが蝶になり、おたまじゃくしが蛙になるように・・・、一方は完全に死に、もう一方は変化して現れるその決定的なポイント・・・、その頂点を教えたのが『伝灯録』の内容であります。これこそが禅門における最も正統な脈なのです。

人が普通、禅と思っているような―結跏趺坐して座禅するような―ものだけが禅なのではありません。本当の禅とは、その頂点において師と弟子とが互いに秘かに伝え合い、一つの世界に入っていくことであり、殻を突いて闇から光へ転換する、その間を教えることこそが禅なのです。

そのような光を、師匠から弟子へと伝えてきた技術こそが禅なのであり、その技術から生まれた言語、身振り、技巧といったものを纏めて伝えているのがこの『伝灯録』なのです。


「悟りの瞬間」素空慈著 塩田今日子訳 地湧社刊



タグ: 仏教 悟り
posted by Only Sir at 14:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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